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Whole Earth Catalogとその周辺(Flying Buzz vol.3より)

前号のFlying Buzzで取り上げた「Whole Earth Catalog」。Flying Booksでの展示も好評の内に先日終了させていただきました。「Flying Buzz vol.3」の内容を数回に分けて紹介します。

------------以下、Flying Buzz vol.3より------------

Whole Earth Catalog
Whole Earth Catalogとその周辺(Flying Buzz vol.3より)_f0024665_23302330.jpg60年代後半、ヒッピーをはじめとする既存の文明化社会に疑問を抱く若者達によるムーブメントは「カウンター・カルチャー(対抗文化)」と呼ばれ、アメリカの西海岸を発端に、全世界的に広がっていった。当時、そんな若者達のバイブルと呼ばれたのがWhole Earth Catalogである。
1968年にスチュワート・ブランドによって出版されたこのカタログ誌は商品を売るための一般のカタログとは違い、若者たちに新しいライフスタイルを提案するという画期的なものだった。「Access to Tools」をコンセプトにセレクトされたモノたちは、自給自足を営むヒッピーのために原始的な生活の手段を紹介したものから、パソコンの基になるコンピュータ・テクノロジーの紹介、精神世界のガイドといったものまで、まさに当時の若者たちが描いていたイメージをデザインしたものばかり。また常に最新の情報にアクセスできるということを念頭に置き、何度もアップデートを繰り返した。その精神は80年代に入ってからも「CoEvolution」「Whole Earth Review」「Whole Earth Magazine」という季刊誌にかたちを変えても継続されている。
現在では、Millennium Whole Earth Catalogを最後に更新をストップしてしまったが、当時のWhole Earth Catalogに記載されていたような希少な情報も、インターネットを通じて簡単に手に入れることが可能になった。誰もが自分の欲するモノや情報を手にすることができるようになり、Whole Earth Catalogが担っていた機能はすでに果たされているのかもしれない。しかし、インターネット上に分散した莫大な情報は何かを以て「選ばれた」わけではない。Whole Earth Catalogというフィルター、1つのメディアから発信された思想や精神にこそ大きな価値があるのではないだろうか。

Whole Earth Catalogとその周辺(Flying Buzz vol.3より)_f0024665_23304734.jpgスチュワート・ブランド
Whole Earth Catalog初代編集長。若かりし頃には『カッコーの巣の上で』で有名な作家のケン・キージーらとLSDをばらまきながらアメリカ中を放浪していた生粋のヒッピーである。その後、Whole Earthという壮大なプロジェクトのもとに、カタログ誌Whole Earth Catalogを出版し、一躍カウンター・カルチャーの英雄になった。早くにハイテクノロジーの可能性に注目し、Whole Software Catalog、先駆的なネットワーク・スペース「WELL」を立ち上げる。現在は、一万年の規模で時を刻む時計をつくるプロジェクトや、文明のアーカイブを構築するプロジェクトを運営。遙か未来の人類社会に向けて標を指し示すべく活動している。
(ロング・ナウ:http://www.longnow.org/  ロング・ベッツ:http://www.longbets.org/)
メディアラボ(絶版)
スチュアート・ブランド(著)室謙二(共訳)
1988、福武書店

Whole Earth Catalogとその周辺(Flying Buzz vol.3より)_f0024665_233158.jpgスティーブ・ジョブス
Macintosh、iPodなどで知られるApple Computer社のCEO(最高経営責任者)。70年代初め、ジョブスはWhole Earth Catalogを片手にキャンパスを徘徊し、中退後はインドへ放浪に出るなどヒッピーのような生活を送っていた。最近のスピーチでも「Stay Hungry, Stay Foo- lish.」というWhole Earth Catalogからの言葉を引用し、このカタログ誌が人生に多大な影響を与えたと語るなど、そのフリークぶりが有名だ。
スティーブ・ジョブズ 偶像復活
ジェフリー・S.ヤング(共著)井口耕二(訳)
2005、東洋経済新報社 ¥2,310

Whole Earth Catalogとその周辺(Flying Buzz vol.3より)_f0024665_233118100.jpgバックミンスター・フラー
スチュワート・ブランドがWhole Earth Catal ogの生みの親なら、その核となる思想の生みの親がバックミンスター・フラーと言えるだろう。発明家、思想家、建築家、数学者、工学者などの肩書きを持ち、ジオデシック・ドーム(フラードーム)、シナジー幾何学などで有名なフラーは20世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチと称されている。地球を宇宙に浮かぶ1つの宇宙船に例え、人類をはじめとするその乗組員が生存可能な環境を持続していかなくてはならないという「宇宙船地球号」の考え方を唱えた。世の中に対してエコロジーや持続可能な社会を考える大きなヒントを与え、Whole Earth Catalogの体系にもその思想が色濃く反映されている。
宇宙船地球号操縦マニュアル
バックミンスター・フラー(著)芹沢高志(訳)
2000、筑摩書房 ¥945
by flying-books | 2006-11-02 23:36 | Flying Buzz


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