Japanese Beatnik: The Tribe (Flying Buzz vol.1より)

先日紹介した長沢哲夫さんらが60年代に行っていた活動「部族」についての記事を転載します。

------------以下、Flying Buzz vol.1より------------

 1950年代にアメリカで起った文学を中心としたビート・ジェネレーション。現在に至るまで文学のみならず、音楽や映画まで幅広く影響を与えたカウンター・カルチャー(体制への対抗文化)のムーブメントです。Flying Booksはフリーペーパー「impact」のメンバーと2年ほど前から、日米のビート・ジェネレーションのビブリオグラフィ(書誌:本のデータ集)の作成を手がけてます。ここでは毎回そのビブリオグラフィからトピックをセレクトし紹介していきます。第一回はFlying Books兄弟分のインディーズ出版「SPLASH WORDS」からこの春に3冊目の詩集を出版予定のナーガこと、長沢哲夫さんらが60年代後半に始めた日本のビート・ムーブメントとも言える「部族」について!


 会社を辞めた99年の暮、街で偶然見かけたフライヤーを頼りに足を運んだのが当時77歳の詩人ななおさかきと山尾三省さんのポエトリー・リーディング。自分の信念にしたがって道を歩んできた二人の力強さに満ち溢れた言葉に一気に引きこまれた。その翌秋、ビート・ジェネレーションの作家たちに多大な影響を与え、環境保護活動等によりピューリッツァー賞を受賞した詩人ゲーリー・スナイダーの来日を機に、かつてゲーリーが日本で過ごした時の仲間たちが一堂に会すポエトリー・リーディングが催され、そのお手伝いをしたことから、ななおさかき、山尾三省、長沢哲夫(ナーガ)、内田ボブら、「部族」のメンバーとの交流が始まった。
f0024665_0235914.jpg 「部族」の活動を簡単に紹介すると、60年代後半、当時の文化の中心だった新宿の喫茶店や中央線沿線でミニコミ誌などの活動を通じて出会い、「部族」を結成。長野県・八ヶ岳、東京・国分寺、鹿児島トカラ列島・諏訪瀬島の3箇所を中心に、既成の価値観に縛られないコミューン(共同体)活動を実践した。67年末に声明文とも言える「部族宣言」を掲載した『部族新聞』を創刊、翌68年に第二号を発行した。(コストを下げるために少ない色数で、いかに華やかな誌面を作るか工夫されたサイケデリック新聞は、中心メンバーだったPONこと山田塊也のアートワークが冴え、印刷デザインとしても注目に値する傑作となった。原案ともなったアメリカの「サンフランスシコ・オラクル」等は現在高額のプレミアがついている。)
その後、独身者が中心に集まったコミューンから家族が誕生し、家族生活と共同体活動との両立の難しさから、コミューンは解散していくこととなったが、諏訪瀬島や屋久島の白川村などは今もその流れの中にあり、旅人をオープンに迎え入れてくれる。
f0024665_0264028.jpg 彼らが何故かっこいいかと言うと、既成の価値観からドロップアウトし、自分の視点で、自分が納得できるような生活を実践しているところ。これは情報に流されがちな都会では本当に難しいことだ。時として、都会で生まれ育った者には、豊かな自然の中で生まれ、都会の生活を知らない人のエコロジー発言に説得力を見出すのが難しいこともある。しかし、東京の中心で生まれたにもかかわらず、30年以上漁師と詩作を両立している諏訪瀬島のナーガさんや、2001年夏に亡くなられるまで、屋久島で百姓・詩人として情報発信をしてきた山尾三省さんの言葉には力強いリアリティが感じられるのだ。
 この春、めでたく10周年を迎えるナーガさんと内田ボブさんの恒例のツアーに合せ、SPLASH WORDSから新作「きらびやかな死」と、すでに品切れとなってしまった「つまづく地球」に英訳詩を付した第二版を同時に刊行することとなった。ひとりでも多くの人にナーガさんの言葉を届けるきっかけになれればと思う。

f0024665_0233598.jpg 最後に『部族新聞』一号より部族宣言の冒頭を紹介したい。「ぼくらは宣言しよう。この国家社会という殻の内にぼくらは、いまひとつの、国家とはまったく異なった相を支えとした社会を形作りつつある、と。統治するあるいは統治される如何なる個人も機関もない、いや「統治」という言葉すら何の用もなさない社会、土から生まれ土の上に何を建てるわけでもなく、ただ土と共に在り、土に帰ってゆく社会、魂の呼吸そのものである愛と自由と知恵によるひとりひとりの結びつきが支えている社会 - ぼくらは部族社会と呼ぶ。」(1967年12月発行「部族新聞」一号より)
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by flying-books | 2006-04-08 23:58 | Flying Buzz


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